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いしいしんじ『光の木』制作日誌


2014年1月頃、
京都にある第二岡本総合病院という総合病院が移転を記念して何か作品性のあるコンテンツ制作できないかという依頼をいただきました。しかしながら正直言いまして、僕は自由に好き勝手に映像制作させていただける環境は好きなのですが、ゼロから自らの表現で作品的なものというのは作ったことがなかったし、いきなり作れる気もしなかったのです(教養の蓄積不足か?)。そこで、妻の酒飲友達で、父も知り合いであった小説家のいしいしんじさんに、短編映像小説の執筆をお願いさせていただきました。いしいしんじさんには執筆に関しては快く快諾いただきましたが、やはり小説家として文章を書く際に、発想やイメージが制限されないように、自由に制作することが条件ということでした。そしてクライアント側に下記のことを了承いただかなくてはなりませんでした。

  1. テーマ「病院」以外こちら側からのイメージコンセンサスはできません。
  2. 執筆後の文章は誤字脱字以外の修正はできません。
  3. 完成したものは必ず公表すること。
3.に関しては、完成後にイメージと違うので使用しないというのは失礼だと思い、付け加えました。正直この時点では十中八九はお断りされるだろうと思っていました。病院というテーマで描いた作品は方向性として暗くなってしまい、患者さんや不特定多数の方に見ていただく際のリスクがあまりに高いと思っていたからです。

ただ、僕の中でひとつの想いがありました。
それは、制作者側の意図にリミットされることなく生まれた作品を見てみたい。という僕個人の素直な気持ちでした。
販売促進やイメージ戦略など制作者側の意図がつきまとう広告やコンテンツは世間に溢れていると思う。そんな中でピュアなプロセスで制作したコンテンツは必ず、見る人の心にとまるハズだ。プレゼン資料も細かく作らず、そう言った想いだけをクライアントにお伝えしたところ、「賛否両論あると思うがやってみなさい。」と賛同くださいました。

そして制作から9ヶ月、ようやくコンテンツが実を結びました。

語り手をお願いしたのは、YUKIやJUJUなどに楽曲を提供している小貫早智子さん。「声がいい!」といしいさんも絶賛いただきました。タイトルバックのイラストはGQ JapanやUnited Arrowsのイラストレーションを手掛ける遠山晃司さん。何かこの作品を通して病院のイメージ戦略など細かい意図はありませんが、結果として、こういった作品に理解がある懐の深い病院であることだけは伝えられたように思います。

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